企業での
活用事例

導入企業の声

請負現場のクオリティの向上と
人材育成
〜顧客満足度アップのために〜

  • 日研総業株式会社・製造事業部(東京都大田区)
  • 製造人事ユニット長 荒井勉氏 製造人事ユニット係長 前田智興氏

  • 主要業務:製造業の請負(製造アウトソーシング)、人材派遣、人材紹介
  • 受験歴:2010年度から3年連続3回目
  • 受験者数:延べ受験者数約160名。1級取得者15名、2級取得者約100名(2012年度現在)

事業の概況

弊社の主な事業は、製造業の請負(製造アウトソーシング)、人材派遣、人材紹介です。お取引先数は、製造業のお客様を中心に1,000社以上です。
請負業務は、作業所単位、ライン単位、工程単位等、さまざまな規模・形態があります。
ライン単位の請負業務の場合、隣のラインは同業他社であるケースもあり、品質・コスト・モラル面などでつねに競争状態に置かれています。そのような状況では、お客様からの依頼事項の達成はもちろんのこと、お客様に対して常に改善活動やその効果など、弊社のアドバンテージをアピールしていく必要があります。

自主保全士の取組みを始めた理由

大きく二つの目的があります。

(1)請負現場のクオリティの向上

一つ目の目的は、請負現場のクオリティの向上です。
各請負現場のクオリティをさらに向上させるために、まずは基本として5S活動を開始。その後、品質改善であるQC活動を展開。その活動の中でTPM・自主保全に出会いました。現在、それらの活動を連携させて進めています。
自主保全活動により、「自分たちの設備は自分たちで守る」という概念を身につけると共に、資格を取得することで、オペレーターの意識の向上を目指しています。

請負現場での各種活動

(2)人材育成

もう一つの目的は、人材育成です。請負現場のクオリティを担うのは、なんといっても「人」です。だからこそ、人材教育は最重要と考えています。
座学だけでは本当のリーダーシップは身につきません。実際の活動の中でそれを育てていくためには、前提として基礎知識がないといけません。そこで、弊社では請負現場のオペレーターをメインに、自主保全士資格の取得を勧めています。
自主保全士検定の受験は2010年に開始し、これまでの3年で延べ約160名が受験しました。2012年度までの1級取得者は15名、2級取得者は約100名です。

社内教育体制

弊社にはトレーニングセンターが全国5箇所(仙台、高崎、彦根、東広島、鹿児島)にあります。各センターには保全技能者育成の講師(製造マネージャー)がおり、彼らを教育者として、教育カリキュラム、社内の通信教育教材の作成、試験対策の体制などを整えています。
請負業務は、作業所単位、ライン単位等で仕事を請け負い、組織で生産活動をするものです。まず、その各組織の責任者が「自主保全活動を導入する」という方針を定め、メンバーに自主保全士の取得を勧めていきます。
そして次の(1)〜(3)のステップを踏んで受験の対策をします。

(1)小テスト

まず、自主保全士へのチャレンジを表明したメンバーに対して、「やる気」と現在の実力をはかる意味で小テストを行います。

(2)通信教育

次に、社内で作成した通信教育を受講してもらいます。テキストと独自作成の問題を各人に配布。まずは配布したテキスト見ながら問題を解いてもらいます。その提出後、今度はテキストを見ないでもう一度チャレンジ。それを5課程に分けて行っています。

(3)トレーニングセンターでのスクーリング

試験直前に、各センターの講師が、毎年7月に公開される実技問題の公開課題について、自主保全士の過去の出題傾向から独自に分析し、その内容をトレーニングセンターでスクーリングという形で受験者にフィードバック。これを受検直前の準備としています。
一般に、請負・派遣という業務特性上、通常の製造業の社員に比べて、従事している企業への帰属意識が弱くなる傾向があります。そのモチベーションを高めるためにも、自主保全士の資格取得などが大切だと考えています。
そこで、弊社では、試験の費用はもちろん、研修を受ける交通費まで会社が負担して、派遣・請負スタッフに資格取得を推奨しています。

人事制度との関連

弊社には人材育成のための「キャリアパス制度」というものがあります。入社初期の新規スタッフ時から管理社員になるまでの階層を7つに分け、それぞれのキャリア段階によって教育・研修や、必須とされる資格が定められています。
自主保全士の2級は現場リーダー、1級は工程管理者になるための必須資格となっています。

キャリアパス制度の必須教育と評価ツール

資格取得の効果

検定試験を導入してから、実際にかなりの効果が現れています。派遣・請負で働く方の中には、短期間で辞める方が少なくありません。その理由の1つに、先ほどの「帰属意識が薄いため、働くモチベーションがなかなか上がらない」ということが挙げられます。
しかし、そういった方も、自主保全士のような資格にチャレンジしたり、活動を続けることで、モチベーションが大きく変わります。請負先の業務遂行能力が向上するだけでなく、弊社の社員としての定着につながっています。
資格を取るだけではなく、資格を取った仲間が集まって実際に成果が残る活動をしていくという流れは、弊社のような業種にはとても効果が大きいと感じます。
弊社が請け負う仕事は今、大きく変わってきています。これまでは手を動かして「つくる」作業が多かったのですが、今は設備を「扱う」という業務が主になっています。
そうすると、弊社が作業だけを請け負い、設備はお客様が管理するというのは、ロスが非常に多くなります。そこで、5Sにはじまり、オペレーター自身による自主保全がとても重要になります。
そのために必要な教育も、成果として見えるものがないと、なかなか先に進みません。そこで、自主保全士という”結果が目に見える”資格はとても効果が大きいのです。

今後の課題

まだ、職場によって資格取得に対する温度差があります。
例えば、作業所の一人が資格を取ると、それがまわりに伝わって、その職場では資格を取ることがとてもステータスになります。
毎年6月ぐらいに、各職場に受験の意向を確認しますが、それ以前に「受験するメンバーがだいたい固まったから、先にテキストを送ってくれないか」と催促してくる現場も出始めています。そういう職場をどんどん増やしていくことが今後の課題です。
また、弊社ではトレーニングセンターなどを活用し、機械保全技能士も育成しています。素養のある人材を集めて、本格的な保全業務をカリキュラムで教えていますが、現場で自主保全士を取得した人材だと、飲み込みも早く、保全のエキスパートにもなりやすいと実感しています。
一般のオペレーターから管理者になるというキャリアアップの他に、専門保全士にもなれる。そのような選択肢を増やすためにも、自主保全士の資格を役立てていきたいと考えています。
そのような意味でも、自主保全士の1級認定者には、さらに高い目標を目指してほしいと考えています。1級より上の「特級」など、資格制度がより充実することを望みます。
弊社は今後も請負業務のクオリティの向上を目指します。そのための人材育成やキャリアパス制度を、自主保全士などの資格制度と共に確立していきたいと考えています。お客様はもちろん、弊社に来たスタッフ自身が喜べるような人事体系・教育体系の構築を目指してまいります。

※本記事は2013年2月掲載時の情報です。